マグミクス2022.06.18(安藤昌季)
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巨大人型兵器「モビルスーツ」。人気アニメ『機動戦士ガンダム』を代表する兵器です。劇中では、モビルスーツは複雑な動きをします。射撃武器で撃ち合うだけでなく、ビームサーベルやヒートホークなどで斬りあったり、相手を蹴り飛ばしたり、踏み台にしたりすることもあります。
しかし、例えばガンダムのコクピットでパイロットが触っているのは「左右2本のレバー」と「フットペダル」だけです。このシンプルな操縦系統で、どうやってそのような複雑な操作をしているのでしょうか。考察してみましょう。
前提として、一年戦争の開戦は宇宙世紀0079です。それまでの80年間はスペースコロニー建設などで、宇宙での作業経験が蓄積されてきたはずです。
1980年代に、アメリカが使用した宇宙服のオプションに「有人機動ユニット(MMU)」というものがあります。これは24個のノズルスラスターを備えたバックパックを背負い、そこから伸びる2本のハンドコントローラーを宇宙飛行士が操作して、複雑な機動を行うものです。
右側のコントローラーでロール、ピッチ、ヨーの回転加速度を操作し、左のコントローラーで前後、上下、左右の並進加速度を操作するというものでした。船外作業のために開発されたものですが、危険性が高いため、現在では使われていません。
一方、宇宙世紀では、パイロットが着用する宇宙服を「ノーマルスーツ」と呼びます。これは「モビルスーツ」に対応する言葉でもあります。1980年代よりも宇宙世紀は遥かに科学力が進んでいますから、MMUが高い完成度で実現していたと考えられます。
質量の違いはありますが、人型の存在が、スラスターや手足の動きで任意の機動を行うという点で、MMUと、モビルスーツの姿勢制御システム「AMBAC」の目的は同じです。宇宙世紀の約80年で、宇宙服や作業用機材を簡単に、かつ確実安全に操作する方法は確立しており、それがモビルスーツの操作系に転用されたと見るべきでしょう。
スラスターを搭載したノーマルスーツに、MMUのようなコントローラーが付いている描写は見られませんから、着用者の視線や手足の動き、発言によるコマンド入力、脳波状態などから、スーツに搭載されたコンピューターが「着用者がしたい動き」を判断して、サポートするノウハウが確立しているのでしょう。そして「状況に合わない指示」は、誤入力として、危険性の少ない行動に置き換える、高い判断力をも備えているのかもしれません。
このような「コンピューターが基本的な機動を判断・管理している」という前提に立てば、モビルスーツ操縦もレバーとペダルで行えるようにも思えます。
機体の方向制御は、ガンダムの場合はパイロット自身の動き(右を向けば、機体も右に旋回する、というような)をセンサーで感知し、コンピューターが状況に合うように判断しているのでしょう(スティック式操縦桿も付いているのですが、コア・ファイター操縦時しか使わないようです)。そして左右のレバーは「セットした位置で、トリガーを引くことで、事前にプログラミングしておいた戦術機動を行う」ものではないでしょうか。
右のレバーを特定位置に引いてトリガーを押し「一番近い敵にバルカン砲を撃つ」を実行しつつ、左のレバーも特定位置に引いてトリガーを押し「一定の距離に近づいたらビームサーベルを抜いて斬る」も同時に実行する、というようなイメージです。
で、この戦術機動は「バルカン砲を撃つ」のような、基本的な動作だけではないと思われます。アムロはホワイトベースで「コンピューターシミュレーション」を繰り返していました。これは、例えば「シールドを敵機に向かって投げつけ、ガンダムはその影に隠れてビームサーベルを抜き、斬りつける」とか「敵が一定の距離に近づいたら、蹴りを放って距離を空ける」みたいな、特殊な戦術機動をプログラミングしていたのでしょう。
実際の戦場で特殊な戦術機動が可能だとパイロットが判断したなら、レバーを特定の位置に動かし、トリガーを引いて「パイロットがプログラムした動きに近い動き」を教育型コンピューターに開始させているということです。
ガンダムの搭載コンピューターは教育型です。「命じられた特殊機動」について、現実的に実行できるよう、コンピューターが最適化を行うのでしょうし、場合によってはパイロット側にモニターなどで逆提案も行っているのかもしれません。
で、敵機にどの程度の速度で近づくのかは、フットペダルの踏込みで、推力を調整するのでしょう。踏まない場合は、自動的に逆噴射やAMBACによる手足の運動で減速し、ブレーキペダルを踏めば逆噴射するわけです。
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