米カリフォルニア州で中国人が違法に運営していた実験室に、「HIV(エイズウイルス)」などと書かれた数千の容器や「エボラ出血熱」と書かれた冷凍庫などが保管されていたことが、連邦議会の調査によって明らかになった。
中国が米国内で危険な病原体をばらまく「バイオテロ」を画策していた可能性があり、周辺住民を震撼(しんかん)させている。(ワシントン・山崎洋介)
同州リードリー市で、この違法な実験室の存在が発覚したのは昨年12月。
法令順守監督官が、使用されていないはずの倉庫の側面の穴から散水ホースが突き出ていることを不審に思ったことがきっかけだった。
中国共産党に関する下院特別委員会が先月15日に発表した調査報告書によると、その監督官は倉庫に入り、実験器具や医療用冷凍庫、実験用マウスを発見。そこにはまた、自らを中国人と名乗る3人の白衣を着た女性がいた。
これを受け、同市は今年3月に立ち入り調査を実施し、病原体の名前が英語や中国語で書かれた容器を確認。
しかし、容器の多くはラベルが貼られておらず、暗号が書かれていたものもあった。
その後、周辺住民へのリスクを懸念する市側が米疾病対策センター(CDC)に詳細な調査を行うよう繰り返し要請したにもかかわらず、拒否され続けた。
CDC担当者が会話の途中で電話を切ったことが何度もあったという。
最終的には、同州選出のジム・コスタ下院議員(民主党)の強い働き掛けにより、CDC職員がようやく5月、現場に姿を現した。
報告書によると、CDCは容器に貼られたラベルに基づいて20以上の病原体のリストを作成。この中には、新型コロナウイルスやHIV、肺炎球菌、マラリアなどが含まれていた。
しかし、CDCはそのリストが正しいかどうか中身を検査しないなど、調査はずさんなものだった。さらに、暗号が書かれたものや、ラベルのない容器の中身についても確認しなかった。
その後、市側は中身の検査を求めたが、CDCは繰り返し拒否した。このため、裁判所命令に従い、市はやむを得ずこれらの物質を廃棄物として処理した。
報告書によると、その際、驚くべきことに致死性が高い「エボラ出血熱」のラベルが貼られた冷凍庫が発見された。その中から銀色の密封袋が発見されたという。
これ以外にも、CDCが検査しなかった容器の中に、危険な病原体があった可能性がある。しかし、すでに処分されてしまったため、不明のままだ。
報告書は、CDCが検査を拒否したことを「容認できるものではない」と非難している。
さらに懸念を高めているのが、実験室の所有者で運営を指揮していた人物と中国共産党とのつながりだ。
この人物は、米食品医薬品局(FDA)捜査官に虚偽の供述をした疑いで10月に逮捕された朱家北容疑者。
同容疑者は、中国で国有企業の副会長を務めていたほか、中国軍が企業を利用して近代化を図る「軍民融合」に関わる会社で役員を務めていた。
朱容疑者はカナダにいた2016年、知的財産の大規模な窃盗に関与したとして同国の裁判所から3億3000万カナダドル(約360億円)の支払いを命じられた。
その後、米国に不法入国し、「デビッド・ホー」という偽名で活動していた。
この実験室は、中国の銀行から130万ドル以上の理由が不明な送金を受けていた。
最大の謎は、朱容疑者が何のために多くの病原体や実験用マウスを集めていたかだ。憂慮されるのは、米国内でのバイオテロを画策していた可能性だ。
地元紙フレスノ・ビーは「中国人による実験室はバイオテロの準備をしていたか?」と題する社説を掲載し、「生物兵器が米国人を脅かさないようにすることは、党派を超えた問題だ。国民の安全が懸かっているのだ」とし、再びこうした違法な実験室が現れないよう規制の強化を求めた。
https://www.worldtimes.co.jp/global/north-america/20231129-176779/
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