京都大学らの研究グループは、「新型コロナウイルスワクチンの接種によって、国内の2021年2~11月の感染者と死者をいずれも90%以上減らせた」との推計結果を発表しました。
この内容について中路医師に伺いました。
編集部:
今回、京都大学らの研究グループが発表した内容について教えてください。
中路先生:
京都大学らの研究グループは、新型コロナウイルスワクチンの接種の効果がどの程度あったのかを検討しました。研究結果は、イギリスの学術雑誌「Scientific Reports」に掲載されています。
日本では2021年2月から新型コロナウイルスのワクチン接種が始まりましたが、効果の検討はこれまで十分におこなわれていませんでした。研究グループは、1、2回目の接種をしていた2021年2月17日~11月30日を対象に、「接種した人が増加するペース」「当時主流だったデルタ型の感染力」「別の研究で示されていたデルタ型に対するワクチンの効果」「人の移動の活発さ」などのデータを分析しました。
そして、様々な条件の下で、感染者数や死者数がどう変化するかを調査しました。なお、対象期間の感染者数は抗体保有率のデータから470万人と計算しています。
研究の結果、ワクチン接種によって感染者数を92.6%、死者数を97.2%減らせたという推計が導かれました。ワクチンを接種した人の感染が防げると、その人が感染させる人も減る効果が特に大きかったとのことです。
研究グループの西浦博教授は「結果的にワクチン接種は上手くいったと言えるが、それで終わりにしてはいけない」と指摘し、「将来の感染症対策のためにはワクチン接種を進めつつ、感染状況の推移をリアルタイムで予測して、政策を決める人や社会に示せる仕組みが必要だ」と話しています。
編集部:
京都大学らの研究グループが発表した内容についての受け止めを教えてください。
中路先生:
これまで、「新型コロナウイルスワクチンの接種率の違いで死亡率に大きな差がある」などのワクチンが死亡率を低下させるという論文は欧米で多くありましたが、日本からの論文は少ないのが実情でした。
今回、京都大学らのグループが日本人を対象にワクチン接種が新型コロナウイルスによる死者を大幅に減少させるエビデンスを英語論文で海外に発信できたことは、大変有意義なことであると考えられます。
もちろん、当時の人の移動制限の影響やデータの解析方法などに関わる限界はありますが、今後もオミクロン流行期での同様の研究が期待されます。
編集部まとめ
京都大学らの研究グループは、新型コロナウイルスワクチンの接種によって、国内の2021年2~11月の感染者と死者をいずれも90%以上減らせたとの推計結果を発表しました。
国全体で進めたワクチン接種体制ですが、その成果が科学的に示されたことについては大きな注目を集めそうです。
https://news.yahoo.co.jp/articles/4c8d5f2e8af9b622f7628137380a0cd353fc80c0
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