昨年の4月14日にオープンした東急歌舞伎町タワー。新宿の新しいランドマークとして、多くの観光客等で賑わいを見せていたが、現在は利用者が減っており、1月31日には歌舞伎町タワー初のテナント撤退があった。
オープン当初は各種メディアでも取り上げられた話題性のあったビルにもかかわらず、なぜこのようなことになってしまったのだろうか。実際に行って、確かめてみることにした。
平日19時頃の歌舞伎町は人が増えていく時間帯。どの通りもすさまじい人でまっすぐ歩けないほどなのだが、歌舞伎町タワーに入るとガラガラで、飲食店の席は3分の1も埋まっていない状態だった。
ビルができた当初は入口にあるエスカレーターの先から、人混みをかき分けて進むような大盛況だったが、現在はスムーズにビルの中に入ることができる。
中にある飲食店に入店し、平日はいつもこうなのかと店内の飲食店スタッフに話を聞いてみると同じようなことをよく聞かれるのか、慣れた様子で答えが返ってきた。
「賑わっていたのは去年の10月くらいまでですね。どの店も入店30分待ちで、待機列ができるほどでした。そこから人が減ってきて、今は全然いません。金曜日や土曜日の夜は、それなりにお客様は来ますが、それでもビルができた当初に比べて少ないです。平日は見ての通りなので暇ですね」
歌舞伎町という土地柄か、水商売をしている身なりが派手な人がいるのが目についたが、それよりも目立っていたのが、外国人観光客だろう。
オープン当初から多く訪れていたそうだが、ビルに訪れる日本人が減ったため、割合として増えたのだろう。
「今は外国人のお客さんが半分くらいですね。日本人のお客さんは、サラリーマンもいれば水商売っぽい人もいるって感じです」
また、ここまで人が減ってしまったのには、攻めた値段設定もあるだろう。
ビル内の居酒屋のメニューは、特段高いというわけではないが、新宿の大衆居酒屋の料金より、少しばかり高く感じてしまう。近くの居酒屋と比べると1割から2割ほど値段が高く、ちょっとした居酒屋感覚で利用すると、料金はかさむ。そのうえ、チャージ料金も発生しているため、歌舞伎町の居酒屋としては比較的高めの値段になっている。
実際の利用者に話を聞くと、価格が高いだけでなく、場所の問題もあるという。利用者の30代男性は仕事で毎日新宿へ訪れるが、利用することはもうないと語ってくれた。
「価格の問題もありますが、わざわざ歌舞伎町に来て、あの場所で料理を食べる気にはなりませんね。常に何かが光っていて、音楽が大音量で流れているので、食事に集中できないんです。他に美味しくて安い店は沢山ありますし、治安も悪い場所なので、近寄りたくないですね」
歌舞伎町周辺には飲食店が多くあるため、歌舞伎町タワーは選択肢として候補に入りづらい。またトー横は、広場に規制が入り、たむろする若者の数は減ったが、それでも広場周辺には依然として若者の集団が形成され、賑やかな場所となっている。
多くの期待を背負って誕生した歌舞伎町タワーだが、ある程度お金に余裕がなければ、楽しむことはできない。現状はインバウンド観光客や、ある程度余裕がある人が多く訪れる施設となっており、特定の目的を持って訪れる人以外は利用がしにくいビルになってしまっている。
できた当初は大歓迎されたものの、いろいろと歌舞伎町のニーズとズレた結果が、このような結末になってしまったのかもしれない。
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