文春オンライン 7.9
https://bunshun.jp/articles/-/55801
■銃撃に使われた手製の銃「簡単に作れるものではない」
犯行直後に警察官らに取り押さえられ、逮捕された男の名は山上徹也容疑者(41)。
演説中の安倍元首相に銃を発砲して殺害しようとしたとして、殺人未遂容疑で現行犯逮捕された。山上容疑者は2002~2005年までの約3年間、海上自衛隊の任期制自衛官を務めていたことが確認されている。自衛隊関係者によれば、「任期制自衛官とはいわゆる“非正規”の自衛官だが、年1回は実弾射撃の訓練をする」といい、射撃への心得はあったようだ。
「現場で押収されたのは長さ40センチ、高さ20センチの手製の銃で、約10メートルの至近距離からの発砲でした。家宅捜索の結果、奈良市大宮町の自宅マンションからは他にも数丁の手製の銃が見つかっています。使用された銃は1本の筒に6発の弾丸が入っており、それが計3本。決して簡単に作れるものではありません」(捜査関係者)
自宅の家宅捜索も事件当日の17時頃から行われた。午後6時過ぎには爆発物を移送する特殊車両が到着。県警が「爆発する可能性のあるものを運び出すから離れてください。遮蔽物のある場所に隠れてください」と周囲の報道陣や近隣住民に大声を張り上げて呼びかけ、あたりは騒然となった。
防護服に身を包んだ捜査員は、黒いガムテープを巻きつけた筒状のもの複数個を運び出している。筒状のものは赤色の導線などが取り付けられていて、発生現場で目撃された「手製の銃」と似ていた。午後9時半には「新たに危険物と見られるもの」が発見されたとして、県警はマンションの住民や周辺住民に対して避難を勧告する場面もあった。
爆発物を作った自宅では「目をそらす愛想のない人」
「安倍元首相は応援演説の予定を、前日夜に急遽、激戦区の奈良に変更しています。一見、偶然地元にやってくる安倍元首相を狙った、衝動的な犯行のようにも見えますが、山上容疑者は逮捕後の取り調べで、『最初は小型のダイナマイトで殺そうと思ったが、実験をしたらできないと分かった。春には既に銃を数丁完成させていた』と供述しています。
もともと宗教団体関係者を狙っていたという話も出ていますが、いずれにせよかなり前から準備した計画的な犯行だった可能性があります」(前出・捜査関係者)
山上容疑者は犯行現場の奈良市で生まれ育ち、1999年、地元の名門進学高校を卒業。その後、2020年秋から今年5月までは派遣社員として京都府内のプラスチック製品会社の倉庫で働いていたという。逮捕時まで住んでいたマンションの隣室の男性は、山上容疑者の陰鬱な印象をこう振り返る。
「この1年で山上容疑者を見たのは5回ぐらい。彼が朝6時頃、出勤時にエレベーターで乗り合わせた時ぐらいです。私服は地味で、私が挨拶しても俯いたり、目をそらす愛想のない人でした」
幼少期の山上容疑者を知る地元住民もこう口を揃える。
■「祖父は会社経営」「家を全然出たがらない子」
「まだ幼い頃に父が亡くなり、母方の祖父が住む家に引っ越してきました。1人、まだよちよち歩きの妹がいて、よく祖父と家の隣にある空き地で、ラジコンで遊んでいた姿を覚えています。祖父は会社を経営していて風格のある人でしたが、この時ばかりは柔和な顔をしていて微笑ましい光景でしたよ。家の中にも妹のことを呼ぶ声が聞こえてきてね……。
だけど、お兄ちゃん(山上容疑者)のことは見た記憶がないんです。何でも後から聞いた話では、引きこもりだったらしく、家を全然出たがらない子だったようです。父親に先立たれた後、頼りの祖父も亡くなり、母は隣町へと引っ越しました。苦労を重ねる生活だったと思います」
山上容疑者の母は、1999年に祖父の家を売り払い、2002年には自己破産している。祖父と父を亡くして経済的に苦しむ一家だったが、家庭がうまくいかなくなった理由の1つは、母と子の宗教をめぐる対立にもあったようだ。
「母はある宗教団体に所属していて、山上容疑者もその影響を受けて会員となりましたが、ほどなくして脱会。その後、山上容疑者は母の宗教団体の分派の団体に所属していたようですが、母が所属する団体を恨んで対立が生まれたようです。母が所属していた団体は安倍元首相ともつながりが濃いとされる団体で、それを理由に安倍首相を敵視するようになった可能性があります。
実際、山上容疑者は調べに対し、『政治信条への恨みではない』と話しつつ、『特定の団体に恨みがあり、安倍元首相と団体がつながっていると思い込んで犯行に及んだ』『そのせいで家族がバラバラになった』などと犯行の動機を説明しているようです」(捜査関係者)
※長文のため一部略
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