>>2022.12.07
NATIONAL GEOGRAPHIC
スウェーデンのカロリンスカ研究所の科学者たちが、脳オルガノイド(実験室で培養した小型の脳組織)に新型コロナウイルスを感染させたところ、神経細胞(ニューロン)間の結合部である「シナプス」の破壊が促進されることが分かった。2022年10月5日付けで学術誌「Molecular Psychiatry」に発表された。
この発見は、新型コロナウイルスがどのようにして中枢神経系に侵入し、病気を引き起こすかについての理解をさらに深めるものだ。ここ2年間で、新型コロナからの回復後も長く持続する神経と行動の問題が報告されてきた。その一つに、頭の中に霧がかかったようになる「ブレインフォグ」という症状がある。ブレインフォグは、(人、時間、場所が分からなくなる)見当識障がい、記憶喪失、慢性頭痛、しびれを引き起こし、新型コロナ後遺症患者の40%近くが苦しめられている。
カロリンスカ研究所に所属する精神科医で細胞生物学者のカール・セルグレン氏の研究チームは、新型コロナウイルスが脳に及ぼす影響と、それが上記のような神経症状を説明できるかどうかを調べるため、脳オルガノイドを用いることにした。
その結果、ニューロン同士をつなぐシナプスが過剰に刈り込まれることが、新型コロナ後遺症患者のブレインフォグを引き起こしている可能性があるとの結論が出た。「おそらくこのことは、新型コロナから回復してしばらく経過しても様々な神経症状がみられる理由の一つかもしれません」と、カロリンスカ研究所の博士研究員で、この研究を主導したサムディアタ氏は言う。
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