寿司ネタの王様といってもいいマグロも、気軽に食べられなくなる日が近づいています。
現在、冷凍マグロの世界最大の集積地となっているのは韓国・釜山。釜山港は、中国沿岸部にも日本の主要都市にもアクセスしやすいという地の利もあり、極東アジアの海上物流のハブ港となっています。世界からやってきたコンテナ船は釜山港に停泊し、そのうちの日本行きの貨物は船を乗り換えて、最終目的地を目指すというのが主流となっています。
さらに、釜山港は、世界最大規模の冷凍冷蔵キャパシティも擁していることから、コールドチェーン物流においては特に優位性を持っています。地中海産の養殖クロマグロをはじめ、世界各国から冷凍状態でアジア向けに輸出されるマグロは、多くの場合、まずは釜山港に上陸します。
そんな釜山のマグロ業界の最も大きなお得意様は中国です。
寿司ブームが到来して久しい中国ですが、マグロは寿司ネタのなかでも人気上位にランキングされます。なかでも中トロ、大トロを好む人が多く、質のいいクロマグロのトロであれば金に糸目をつけないという人も多いといいます。
おおざっぱなイメージとしては、世界各地から釜山港に届くと、まずは大トロや中トロが欧州や中国市場向けに切り取られ、残りの赤身の一部が日本に配分されます。なかには、日本で水揚げされた日本産のマグロも含まれています。日本で水揚げされたのちに一度釜山に送られ、大トロはEU、中トロや赤身は日本に返ってくる、という流れもあるそうです。
釜山港が流通のハブとして機能しているのはマグロだけではなく、カニやエビでも同様です。成長を続ける中国の水産業界との結びつきが歴史的に強いため、釜山港のプレゼンスは今後も高まっていくものと思われます。
中国の水産業者やバイヤーが海外でまとめ買いした水産物を釜山で荷揚げし、現地で切り分けや加工を行って大部分を中国市場に持ち込み、余剰品は日本や東南アジアに分配するという流れが、アジアにおける水産流通の今後のトレンドになりそうです。
それを知ると「中国の残り物を食べさせられている」ような気がするかもしれませんが、そもそも日本では大トロはさほど需要はありませんでした。中国が大トロを高く買ってくれるからこそ、日本人は赤身を比較的安く食べられているのです。
中国と同様に、ここ数年マグロの需要が伸びているのがアメリカです。
全輸出量の8割ほどを日本が輸入していたメキシコ産養殖クロマグロをめぐっては、2020年からアメリカへ輸出されることが多くなったのです。そしてついに2021年にはアメリカの輸入量が日本をわずかに上回りました。今後、数年以内にメキシコ産養殖クロマグロの7割がアメリカへ輸出されるようになり、日本への輸出分は2割未満にとどまるようになると私は見ています。
こうした世界での買い負けの原因は、ほかにもあります。
水産物に対する舌が肥えている日本人を消費者として抱える日本の水産業者は、海外で買い付ける際、要求が高すぎるのです。品質や規格が基準に見合う品物だけを選別することはもちろんのこと、在庫を抱えるのが悪とされているので小ロットで発注します。一方、米中の業者は細かいことは言わず大ロットで仕入れる。品質重視はいいことですが、どちらがお客さんとして歓迎されるか、言わずもがな。
そんななか、マグロに限らず日本市場は海外の生産者にだんだん相手にされなくなってきているのです。水産業界の三大展示会の開催地はアメリカ、スペイン(2021年まではベルギー)、中国で、残念ながら日本は入っていないことを見てもよくわかります。(抜粋)
https://approach.yahoo.co.jp/r/QUyHCH?src=https://news.yahoo.co.jp/articles/ce7e43bf5a888d70eda935d2b45e33c8dab45641&preview=auto
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