トラックの荷台に載せられた女性は、ほとんど裸で、足は不自然な方向に折れ曲がっている──。イスラム武装組織ハマスの戦闘員に連れ去られた女性の姿をとらえた映像は、世界中にショックを与えた。身体に彫られたタトゥーなどから、彼女がハマスによる攻撃の対象となった音楽フェスに参加していたドイツ人女性のシャニ・ルークさん(22)であることが明らかになっている。
映像の中でシャニさんはぴくりとも動かず、ネット上では、彼女がすでに亡くなっているものと受け止める人々も多かった。しかし、シャニさんの母親であるリカルダ・ルークさんは、「娘が生きているとの情報を受け取った」とドイツのタブロイド紙『ビルト』で語った。母親によると、シャニさんは頭部に重症を負って危篤状態にあり、ガザ地区にある病院に入院しているのだという。
レイプ被害にあった複数の遺体も
そうしたなか、ガザの病院が戦火に覆われている。ガザ地区の保健省は10月17日、市内の病院が空爆を受け、少なくとも500人以上が死亡したと発表。医療施設を対象とした攻撃は国際人道法に違反しており、戦争犯罪に該当する可能性もあるが、イスラエル側はこの空爆について、“ガザの武装組織『イスラム聖戦』による誤射だ”と主張し、自軍の関与を否定している。
空爆を受けたとされる病院は、医療関係者や患者、避難民たちで混み合っていた。SNSでは、爆発した病院を撮影したとされる写真や映像が拡散されている。建物は激しい炎に包まれ、地面には多くの遺体が横たわり、なかには、幼い子どもと思われる遺体も見られた。イスラエルと同様、ハマスも関与を否定している。
一方、イスラエル側の被害状況も甚大だ。イスラエル軍の鑑識チームは、ハマスの攻撃による犠牲者の遺体を解析し、残虐な行為を加えられた形跡を発見したと発表。現地での混乱やハマス・イスラエル双方の思惑などによって情報が錯綜している状況だが、海外メディアはどのように報じているのか、国際ジャーナリストが語る。
「『ロイター』はイスラエル軍関係者のコメントを紹介し、手足が切り落とされた遺体や、首を切られた子供の遺体、そしてレイプ被害にあった複数の遺体が見つかっていると報じています。また、イギリスのニュース専門局『スカイ・ニュース』は、ガザ近くのイスラエルエリアで遺体回収を行うボランティアの男性に取材しており、『裸のまま拘束された女性の遺体や、後ろ手に縛られて一緒に拷問を加えられたと思われる親子の遺体を見つけた』という証言も得ています」
10月15日の時点で、双方の死者は4000人を超えたと発表されていた。現在の死者数は一層ふくれあがっていることだろう。
今回報じられた病院の爆発など、ガザ地区内の状況は日に日に悪化。シャニさんを含めた人質は今どうなっているのか、安否が懸念されている。ハマスはイスラエルから拉致した21歳女性ミア・シェムさんの映像を公開し、交渉材料にしようとしている。緊迫の度合いは高まっている。
https://news.yahoo.co.jp/articles/5bee9a7d015ae18410c20f297bf1402c553f56d8
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